九月ウサギの手帖

うさぎ年、9月生まれのyukiminaによる日々のあれこれ、好きなものいろいろ。

大阪ちょこっと観光日記------パナスタライブの前後のこと

先月の藤井風さんの大阪パナソニックスタジアムライブから、早1か月。
パナスタライブの番外編というか、大阪ちょこっと観光日記です。
ライブの前日、10月15日(土)に大阪に着いていたので、この日は関西在住のつれあいと会うことに。
法善寺横丁に、関西風の出汁が効いた美味しいおでん屋さんがあるというので、そこに行く予定だったのだが......電話をしたら「現在使われておりません」。
残念ながら、閉店していたらしい。
個人経営のこじんまりしたお店だったから、コロナの影響で閉めちゃったのかもねと言いつつ、とりあえず道頓堀へ。
気候もよく人がいっぱい。
とりあえず法善寺横丁へ行こうということになるが、その横丁が発見できず......お腹も空いてきたし、法善寺横丁でなくてもいいよと言う私に、お店の人に聞いたりして探すつれあい。
道頓堀からメインの通りを行きつ戻りつして、ようやく発見。


メインの通りからはがらりと印象が変わって、こんな一角が。

これは朝ドラで見かけた風景!
「あ、この風景、確か『おちょやん』に出てきた気がする」
ということで、つれあいはここを見せたかったらしい。


京都の商店街でも小さな神社やお地蔵様などを見かける。
東京では見かけない風景で、商売と神様との距離が近いというか、面白いなあと思う。


お店の佇まいの雰囲気で、創作和食の「いちい」というカウンターだけのこじんまりとしたお店を選んだが、当たりだった。
おまかせ6品コースで。

kiseturyouri-ichii.gorp.jp

このお店の方におでん屋さんのことを尋ねたら、病気だったご主人が一昨年亡くなられたとのこと。🙏
個人経営のお店は、経営している人がいなくなると、それっきりなことが多いんだなとしんみり。


翌日はひとりで、16日(日)のパナスタを迎えるわけだが、その時のことはブログを見ていただくとして。
      ↓

kate-yuki.hatenablog.com


このパナスタの後がまた、長い旅路だった。
スタジアムの退場の順番がかなり後ろの方で、随分長い間待機して、駅に向かう道中もあまり早くは進めず、万博記念公園駅に着いても、モノレールに乗るまで長蛇の列。
スタジアムはアナウンスがあり交通整理がされていたが、駅では駅員さんなどの誘導はなく、たぶんこの列だろうと並び、「これはモノレールの列ですか?」と聞かれ、「たぶん、そうだと思うんですけど」なんてやりとりをしていた。
が、無事モノレールに乗ることができた。
乗り換えで、この辺で何か食べて行こうかと思うも、チェーン店のようなところしかなく、土地勘もないので、とりあえずホテルの最寄駅になる新大阪まで行ってしまおうと思った。
新大阪に着いた時点で21時をだいぶ回っていた。
意外とお店ないなあとうろうろしているうちに、だんだんふらふらしてきて、もうどこでもいいやと思っているうちに、21時半近くになり、駅中のお店がどんどんしまってしまう。
ここで、天ぷらうどんでも食べるかと飛び込むと、タッチの差でラストオーダー終了。
パナスタ帰りの方が大勢いたせいかどうかはわからないが、テイクアウトのお弁当もほとんど売り切れ。
ホテルで朝食を食べてから、お昼はおにぎり1個と小さなお菓子数個だけで、猛暑をしのぎ、ライブを経験し、21時半になって食べものにありつけないとは.....。
大阪っぽい(が何かはわからないが)何か美味しいものを食べて今日のライブをしみじみ振り返りつつ疲れを癒そう、と思いつつ、「何か美味しいもの」にこだわり過ぎて、欲張り過ぎて、何も果たせないという、私のありがちなパターンに陥ったらしい。
空いているお店がタリーズしかなかったので、そこに入り、アイスラテとラザニアを注文。
それも10分ちょっとで閉店とのことで、あまり美味しくもないラザニアをかきこみ(タリーズは東京にいてもいつでも行けるのに)、そうか、昨日行った道頓堀とかは賑わっているけれど、駅の中は早いよねということに遅まきながら気づく。

なんとなくの不全感を抱え(ライブがよかったので余計に)、コンビニでハーゲンダッツのアイスを買ってホテルに戻ったのであった。

お風呂の後、さっぱりしてLASAカラーのバスタオルを広げて眺めながら、ベッドに足を投げ出して、前の日に買っておいたシャインマスカットとハーゲンダッツを食べたのは楽しかった。
欲張らずに何かテイクアウトして、ホテルでのんびり食べればよかったなあ、なんて。

翌日、ライブのあった一昨日、昨日とは打って変わって、空は灰色、雨が降ったりやんだり。
なんという天の采配。
暑いのは大変だったけれど、光り輝く2日間でよかったなと思った。
で、昨日の不全感に負けず、帰路に着く前、あらかじめ調べておいた「パンデュース」という美味しそうなパン屋さんへ。

www.painduce.com


ここは絶対本店が美味しそうだという勘が働き、本町という駅まで出た。
パン屋のある方はオフィス街で、東京とあまり変わらない雰囲気。
お店に入ると、ハード系のパンが多く、見ただけで絶対美味しいという確信が湧き、どっさり買い込んだ(帰宅後、冷凍しておく用)。
フルーツの乗ったデニッシュなども買いたかったが、日持ちがしなさそうなものは諦めた。
(あとでチキンとかぼちゃの乗ったおかずパンを新幹線の中でのお昼ご飯にしたけれど大変に美味でした!)

ところで、宿泊したコンフォートホテル新大阪は、コーヒーマシーンでいつでも淹れてのコーヒーを飲めるのはよかったけれど、線路沿いで、3階だったので電車の音がかなり響き、朝は予定より早く目が覚めてしまった。
あと、合理化で仕方ないけれど、チェックインもチェックアウトもタッチパネルで自分でやる、というのがちょっと寂しいのよね。
帰り際、「ありがとうざいました」の一言もないので。
その割にはシーズン価格のせいか、結構高かった......旅行支援も対象外だったし。
まあ、4回目の抽選で当たってぎりぎりの予約だったので、泊まれただけでもありがたし、ですが。

旅の最後、新幹線に乗る前、駅で「堂島ロール」の売り場に目が止まる。
よく聞くロールケーキなので、そんなに美味しいのかなと思いつつ、迷う。
食べてみようかな、でもただのシンプルなロールケーキだしな、どうしようかな、
と迷いつつーーこんなことで悩むなよとーー新幹線で食べる用の1切れだけの箱入を購入。
デザートに食べたけれど、これもびっくりするほど美味しかった!
ふわふわで、しっとり、甘さ控えめ。
大阪を離れるとライブの余韻が消えてしまうようで、帰りたくないよう〜と思いつつも、ロールケーキを食べている間は、至福のひと時だった。

と、ほとんど「食い意地」での行動ばかりで恐縮です。😅


帰宅後、LASAタオルを普通のバスタオルにするのはやはり忍びなく、ソファの背もたれにかけたら、妙にしっくり馴染んで、そのまま定位置になっている。

 

★追伸★
と、このライブからたった1か月の間に、アリーナツアーの日程発表、そして昨日はチケット当落の発表日。
私は......ラッキーなことに第一希望のさいたまスーパーアリーナ2日目に友人と一緒に行けることに!
今回は仕事の調整が難しく、埼玉と名古屋各1日しか選択肢がなく、2会場どれも第一希望のみ。
パナスタ当たったから幸運は続かないかもと気弱だったけれど、ありがたく当選。
クジ運がないと常日頃ぼやきがちな私、これからはぼくやくのはやめようと思う!
客席も増えたし、ライブ数も多いので、当選の声は多いみたいだけれど......。
複数応募できない人もいて外れる人は外れるし、一方で2回分当選する人も出て、e+の仕組みに疑問を抱く人もいる様子。
ライブごとに、微妙に応募方法が変わったり、説明が足りなかったり、私もe+のチケットの応募のシステムには疑問というか、不満を抱いている。
あれだけの数を捌くシステムを運営するのは大変だと思うけれど、「公平さ」「わかりやすさ」を意識してほしいなあ。
これも今までこんな大がかりな抽選システムのライブには縁がなかったので、風さんファンになって初めて経験したこと。
この年になって、いろんなことを経験してます😄。

「死ぬのがいいわ」のVisualについて騒ぎたい

www.youtube.com

スタジアムライブ後、いろいろあってざわざわしていて.....ライブで使用された「死ぬのがいいわ」のこのVisualについてもっともっと騒がれてもいいのになあと思うので、私はひとりで騒ぐことにした。
とにかく、この映像は凄い。

海外で話題になっている「死ぬのがいいわ」のMVがないので、そのために撮影された側面もあるのかもしれないが、もう、これを公式のMVにしてもよいのでは?
スタジアムライブ当日、私はオペラグラスで風さん本人を見つめていたので、この映像に気づいていなかった。
自分が愚か過ぎて泣けてくるのだがーー部分に囚われると、全体を見ることができないという、いい例ですよ、まったくーーこうしてYouTubeにあげてくれたことに感謝。

全編モノトーンの映像、白と黒のなかにグラデーションと艶があって、深みがある。
1960年代ヌーヴェルバーグの映画をリメイクしたみたいな質感。
そして、ワンカットの撮影。
どういうカメラアングルなのか、技術的なことはわからないが、被写体とカメラとの位置が近いのか、風さんが画面から飛び出してくるような立体感がある。
初見の際は、振り付けの人がいたのかな?と思ったが、繰り返し見るうちに、動きが今までの風さんっぽいので、これは風さん自身の中から、即興的に出てきたものなのだろうと思うようになった。
その後、スタジアムライブ用に短時間で撮影されたというのをツイッターか何かで読んだので、ああ、確かにそういう勢いで撮影された映像なのだろうと確信(詳細はわからないが)。
監督は、今回のスタジアムライブ全体の映像と、「へでもねーよ」「旅路」「damn」の名作MVを手がけた山田健人氏。彼も天才!
登場するのは風さんひとりきり、それも上半身だけで、表情と手の動きで多彩な表現が3分程の中に詰め込まれている。
その揺らぐような表情と動きにもう目が釘付け、素敵すぎて吸い込まれそう、倒れ込みそうです。
「死ぬのがいいわ」の世界観が見事に表現されている。
こんな素晴らしいものを見られて、生きていてよかったです。
私も大好きなこの曲にMVがないので、もしこれから撮影されるとしたら、どんな映像になるだろう?と想像したことがあるのだけれど、これだけ映画やらいろんな映像が好きな自分でも、浮かばなかった(自分にあまり想像力がないから、いろいろ見たいのかも)。
せいぜい、ロケとかなしで、ピアノと風さんだけがいいのかな、くらい(それではライブ映像と同じ!)。
この映像は、虚な表情によるちょっとあやしい色気と、「死ぬのがいいわ」の歌詞に合わせてにっこり笑うという、やや狂気にも近い表現も含み、それでいて病んだ感じはなく、そこはかとなく面白くて美しい。
何より、大きな手がひたすら美しい。
手だけでなく、肩甲骨の動きもしなやかです。
ちょっと現代舞踊的なテイストもある。
もう、これは「何なんw」?!
これを引き出す山田監督って凄い(と何度言っても足りない)。
ふたりの間に、信頼関係がないと作り上げられない映像だと思う。
偉大な現代舞踊家ピナ・バウシュ(2009年逝去)はダンサーたちに振り付けを教える前に、「あなたのことを聞かせて」と語りかけ、ダンサー自身のことを知ることから始めたという。
「旅路」のMVでは風さんの故郷、里庄で撮影しているから、だから、あの映像が「あなたのことを聞かせて」になっていると私は勝手に思っている。
信頼感プラス、親密感もかなりあると思うぞ!
「まつり」や「grace」など作り込まれたMVも素晴らしいけれど、この「死ぬのがいいわ」は別の位置にあり、私の胸にぐさぐさ刺さった。
藤井風は歌とピアノだけでない、並外れた表現力を持っていて、やはりマネージャーずっず氏が言うとおり「普通の子(人)」じゃない。
思えば、昨日今日身につけた表現力ではなく、YouTubeでコツコツ何年もわたって動画をあげていたからこそだよね。
この魅力的な奇妙さ、暗さも失わないでほしいなと思う。
(graceがあまりにも光り輝いていて、ピースフルなので、悟り切るのは早いのでは?というのが正直な気持ちだったので。もちろんgraceは曲もMVも大好きなうえであえて)


ちなみに、「旅路」BTS(Behind The Scenes)のなかで、「19歳の山田健人にオファーしたいというトチ狂った話がきて......」という言葉を聞いて、えっ、山田監督ってベテランっぽく見えるけれど19歳の天才少年だったの? 風さんより年下??と、その言葉の意図を汲み取れなかった私でした(もちろんその後すぐわかったけれど。実際は29歳だった)。
そして、BTSを撮影したエリザベス宮地さんは映像の編集の天才だと思う。
ミッチャムの鍵がない、というところから入るなんて。
そしてそれを嬉しそうに言うずっず氏。
山田監督とはまた違う次元で、風さんのことをわかり尽くしている感じ。
宮地さんによるアリーナツアーのBTSもほんとに楽しかった。
風さん本人の人柄と才能が、敏腕マネージャーずっずさんはじめ、こういう天才クリエイターたちを呼び寄せるのだろうなあ。
話がそれましたが。

「死ぬのがいいわ」について騒ぎたいと言ってるわりには、語彙力が及ばず。
とにかく、映像を見てもらうのが一番ということで。

で、ツイッター上のざわざわは、この世界は、悟りとは程遠いカオスな人間たち(自分も含め)の集まり故のことで......。
ファン同士がSNS上で指摘し合うのはやめようという、ずっず氏からの呼びかけがあった。
これは至極真っ当な呼びかけだと思う。
皆、風さんが好きすぎて熱くなったりする人が多いかもだけれど、やはり過剰になるのは健康的ではない気がする。

 

見返り
求めるから
いつも傷ついて終わる

ご褒美
欲しがるから
いつも腹が減ってる


「特にない」より


と、HEHNのなかで、すでに風さんが歌っている。
公式にアップされた映像や画像は営利目的に「転用」するのでない限り、自由に使っていいなんて、なんて寛大で自由なのだ。
だってほら、某巨大アイドル事務所みたいに閉鎖性的になってしまっては困るし、嫌だ。そんなのつまらない!


また、風さんがYouTubeにあげていたマッシュアップの曲の歌詞に、差別的表現(当事者である作詞者本人が書いたそうだが、私はその詳細はわからない)があり、そのため削除されたということもあり。
風さんが書いた歌詞ではないにせよ、素早く対応して自分の言葉で(それも英語で)、いたらなかったことをツイッター上で表明したのはよかったと思う。
例えば、こういうことかな。
日本人があえて皮肉っぽく自分のことを「黄色い●●」(●●は何でもいいけど)と歌ったら、それは自虐ネタとして受け止められるけれど、違う人種の人に歌われたら、それはまた違う意味合いを持つーーというような解釈でいいのかな?

藤井風の音楽は世界に広がっていくべき音楽だと思う。
こんな素晴らしい音楽をこの国だけに閉じ込めておくのはもったいなさすぎる。
現代はネットで軽々と国境を超えていくし、実際、もう広がっていきつつある。
SNSは海外ファンとのつながりで重要なツールになると思うので、慎重になりつつも、これからも楽しく活用してほしい。
それにしても風さん本人が、エゴサーチしてツイッターをぽちぽち拾っては見ているような気配もあるので(っていうか、全部ではないにしても実際に結構見てる)、あんまり気にせず、ゆったりしてほしいなと思う(けど、見てしまうのはわかる)。


*追伸*
話は変わって、今年もあと2か月を切った。
年頭、「藤井微風」と書き初めしたのは誰だっけ?
もう熱風&強風で私は吹き飛ばされそう。
スタジアムライブが終わったと思ったら、アリーナツアーの当落が待っているし。
今年の紅白は「まつり」で決まりだ!と思っていたが(すでに出場する前提で考えている)、「grace」かもしれない。
「grace」は、何かひとつの大きな区切りというか、
”藤井風、始まりの終わり。次の第2章へ”
みたいな印象を受けている。

 

藤井風スタジアムライブ まるで人生のように


【まえがき:スタジアムライブのレポートとはほど遠いもので、自分のための備忘録かつ今回行けなかった友人のために書いている部分もあるので、まどろっこしい方は適当に読み飛ばしてください。前半の、開演までが大変だった云々の記述は、今後もしスタジアムライブなどあった際、初参加の方の参考になるかも。】

藤井風スタジアムライブ、16日の2日目に参加してから早1週間。
一昨日くらいまで、大阪吹田市パナソニックスタジアムに未だ魂を置いてきたままのような気がしていたが、1週間経つとだんだんと自分の日常が戻ってきつつある。
けれど、深まりゆく秋の気配とも相俟って、祭りの後は寂しい。

というわけで、前回の記事まではチケット当選せずだったが、その後ステージのプランを組み直して用意できる席が増え、その再抽選に応募し、4回目にして当選!
マネージャーずっず氏のアドバイスどおり、2日めの日曜、あえてスタンド席1名で応募したらやっとやっと「チケットをご用意できました」の通知が😭......当たる前から17日は有休を申請していたという「念」が通じたのかも。
その時、すでに9月末、慌ててホテルと新幹線を予約した。
贅沢に前日の15日に大阪に入り、ライブ翌日の17日に帰る2泊3コースにした。
何でもベジタリアンフーズも出店、グッズ購入は予め申し込んでおく必要もありで、次から次へと情報が......今回はグッズは購入しないなあと思いつつ、とりあえず申し込むだけ申し込んでおいた。
仕事も忙しく大阪行きを用意するだけで精一杯、アプリでの情報もあまり熟読できず、とにかく出たとこ勝負で、という感じで挑んだが......スタジアムライブを甘く見ていた。

これはもう、ほとんど野外フェスに近かった。

当日、どういうスケジュールで動けばいいのが見当もつかないまま、11過ぎに万博記念公園駅に到着。

まず、想像以上にパナソニックスタジアムのある万博記念公園が広かった。

そして、想像以上に暑かった。
1日目に行った人のツイッターを読んだりして前知識を少しは入れていたが、すべてが自分の想像以上。
東京の自宅を出る時は薄曇りで、雨や寒さを心配する方向だったのだ。

なので、HEATのロングTシャツを着用。
しかし、これが暑かった。
そういえば、半袖のロンリーラプソTも持っていたのになぜそっちにしなかったの、自分〜と後の祭り。
で、ベジタリアンフーズの「KAZE KITCHEN」の会場に近づくと.....びっくりするような長蛇の列。これはいったい何時間待つのか予想もつかない。皆、忍耐強いなあと思いつつ、連れもなくひとりでこの暑さのなか並ぶ気力はなく、あっさり諦めた。
じゃあせめてグッズは購入しようと思うも、売り場はどこなのだろう?と、なかなかな段数の階段を昇り降りして、体力消耗(先にちゃんと確認しろよ、自分〜)。

スタッフの方に聞いて、スタジアムの近くであることがわかり、てくてく。私の購入できる時間帯の番号は12時台からだったので、先に向かうことにする。
その距離も結構あった。

そしてグッズ売り場の辺りも、日差しを遮るものがなく、暑い。

自分の番号が来るまで、なんとかやや日陰になっているスタジアムの裏手に回り、待機。
ここでリハーサルの音が聴こえてくる。おお、とか思いつつ、ひたすら待つ。
1時間くらいは待っていただろうか。
ようやく自分の番になり、グッズの列に......そこからがまた長い。日差しのないところで、だいぶ並んだと思う(もはや時間もはかっていない)。

決めていた黒いTシャツのSサイズは目の前で売り切れたので、Mサイズを、そして買う予定ではなかったあのバスタオルも結局買ってしまった。
すでに買って肩にかけている人のを見たら、色もきれいだし、ちょっとしたミニタオルケットみたいで思っていたより素敵だったので。

購入後、あまりに暑いので、早速このTシャツに着替えることにした。

しかしトイレも長蛇の列。
そこからまたてくてく歩いて芝生のある公園のある方へ戻り、多少は列少なめのトイレの列に並ぶ。30分以上は並んだろうか。

和式の古いトイレの個室で必死で着替えて、やっとほっと息。

で、その公園でコンビニで買った梅干しのおにぎり1個と水と、小さいカントリーマアム4個のお昼をとる。おにぎり買っておいてよかったとしみじみ。

しばらくその公園で休んでいると、スカートだったせいか素肌部分の足が猛烈に痒くなる。蚊ではなかったので、草にかぶれたのか?
ふー、いろいろあるなあ。
長い旅路、さながら巡礼の旅のようである。

これでも30代後半まで、一晩中踊るテクノの野外レイヴなんかに何度か行った経験があるのだけれど、そういうイベントから長く離れていたしなあ。それと同じくらいの覚悟が必要だったかも。

暑さ寒さ対策両方必要、スカートではない方がよかった、リュックサックを用意すればよかった、食べ物をもっと持参するか、落ち着いて事前に食事をしておくべきだった、などなどの後悔というか反省点が。

 

 

と、あれこれありつつも、やっと会場の時間に。
会場入りはスムースだった。
しかし......私の席は、スタンド席5階19列で最上階の最後部席という、ここを引き当てるのは逆にすごいと思ったけれど、果てしなく上へ上へと上ることになる。

5階席のブロックに入ってから、そこからまた階段をかなり上がっていく。
その階段がコンクリート剥き出しで急勾配なわりには手すりが部分的にしか付いていなくて、すごく怖かった。
ようやく席に着くと、目眩がするような高さで、皆こんなところでサッカーを観戦しているのかと感心した。

一度トイレに立ったけれど、席に座っているのが怖くて、しばらく席ではないところで待機していた。

それにしても、ここに集っている3万人ほどの人が皆、藤井風さんを好きでたまらないのかと思うと、なんとも言えない気持ちに。
すごいことだなと思った。



*私の席から見たところ。ステージに近い左側だったのはよかった。

さて、やっとライブレポート、と言いたいところだけれど、音楽を言語化するのが苦手なので、たいしたこと書けません。


その前に、またまた先に反省点。

遠いのでオペラグラス越しでしょっちゅう見ていたのだがーーモニターに映る風さんの姿が加工っぽくて全身があまり映らないので、よりリアルな姿を見たいとばかりにーーオペラグラスの焦点を合わせたり、素で見たり、あたふたしているうちに集中力がやや欠けた。
モニターに今回のために制作された映像も流れていたりしたらしいのだが、まったく気づかなかったよ!
何より、最初の風さんが座禅を組みながら登場する印象的なシーンをまるまる見逃していたのである。なんということ!(後でツイッターで知った)。
そんな人間はあのライブ中、私くらいかもしれん。不覚。

その時いったいどこを見ていたのかもう記憶がないのだが、オペラグラスで違うところを見ていたのかなあ。
これはもう、すぱっと諦めて、オペラグラスを手放し、全体を見て楽しむべきであった。
と言いつつも、5階なのに驚くほど距離感がなく、音もよかったので、感動だった。
すり鉢状の会場の最上階も、皆が立っているとそれほどの怖さもなくなった(それでも若干高所恐怖症気味の私は、何かの拍子にこけて前の席に転落したら将棋倒しになって多くの人を巻き添えにして死ぬなとか、楽しさのなかにも怖い想像が時々)。
初めの方のMCで風さんが「大変ななか、よう来てくれました」といったことを言ってくれた。
いやほんと、大変だったけれど、来てよかったよ〜と心のなかで。


衣裳はインドの修行僧(がどんなものを着ているか知らないけど)のような、布を肩にかけた白っぽい凝ったもの。

さて、曲で印象的だったものを。
★「優しさ」

アルバムとはかなり違う歌い方で、ややジャズより?(うう、語彙力がない)な雰囲気で、よりエモーショナルで、これはかなり心揺さぶられた。


★「grace」

今回のスタジアムライブ直前、インドで撮影されたMVも発表され話題となった新曲。なので撮影OKという大盤振る舞い! 
電源を切っていたiPhoneを慌てて起動させ、5階から撮影。

はたと、いやいやこんな遠くからの映像残すよりは目に焼き付けるのだと、1分で止めた。
後で見てみると、案外と音がきれいに拾えていて、むしろ上の階だっただけに、会場の空気全体に回りこんでいるような、厚みのある音が録音されているようで、これはこれで味があるので映像は撮らなくても、音だけ録っておけばよかったなあと、またまた後悔。
後日、ツイッターYouTubeに次々あがる動画を見て、これって素敵な計らいだったなあとあらためて感じた。

皆のスマホの光がきらきらと星のようだし、行けなかった人や海外ファンへの贈り物にもなるし、いい形での新曲の拡散にもつながる。
この、出し惜しみしない「チーム風」のやり方は解放的で、「優しさ」に溢れている。
風さんの音楽活動がこういう場所で本当によかったと思う。
「grace」は「まつり」と並んで、私の脳内リピート再生率が高く、仕事中もよく鳴っている。
光と魂の解放、自分を愛すること、がテーマだろうか。


★「死ぬのがいいわ」
サックスのイントロがあり、昨年のアリーナツアーは「風よ」がサックスのみだったので、おお、今回は何の曲?とわくわくしていると、そこから、今アジアでも大人気のこの曲へとつながっていった。


★「帰ろう」
レゲエのリズムが鳴り、まさかこのタイミングで新曲はないよね?!と驚いていると、レゲエ風の「帰ろう」。
しんみりしたり深く考えこんでしまうこの曲がまったく違うアレンジで、軽快に。
元の曲も好きだけれど、このアレンジ、かなりよいと思う。
こういう「帰ろう」の解釈もあるよねと。


★「まつり」
いよいよハイライト。このスタジアムライブのテーマだと私は勝手に思っていたのだけれど、まさにそんな感じ。
風さんの立っていた台座がせり上がり、どんどんどんどん高くなり、この5階までに近づくのではと思わせるほどに。
最後に大きな花火が炸裂、ほんとの祭りになった。


前半はインド修行僧風な白風さん。
後半は真っ赤な上下の衣裳の赤風さんで、遠くから眺めていると、サンタクロースが駆けずり回っているみたいに見えて楽しかった。
いや実際、風さんは自らもまだもがいている修行僧であり、同時にたくさんのプレゼントを配ってくれるサンタクロースだと思う。

セットリストをはじめ、各曲の詳細な解説・感想、演出の様子などは、私が書くより他の方のブログの方がよくわかるかと思うので😅、リンクを貼っておき
ます。

imlv40.hatenablog.com

kiyohisa0919.hatenablog.com

最後は、会場の皆を抱き締めるような仕草をしてステージを離れた姿が今でも目に残っている。

そしてそして。あれほど待ち望んでいたのに、夢の時間は始まるとあっという間に終わってしまう。


このライブに行く前に、友人と話していて、彼女にも長年の推しがいて、毎年地方に定例のコンサートに行くらしいのだが、始まったら終わってしまうと、開演前から切なくなってしまうそうだ。

少し前の私なら、何をそんな大げさな、その時を楽しめばいいのにと思ったかもしれないが、その感覚、今はとてもよくわかる。

あまりにも好きすぎて始まる前から切なくなるのだ。
実は以前、このブログで「藤井風を好きになると、なぜか切なくなる」という文を書いたことがある。

kate-yuki.hatenablog.com



これはもう、藤井風が好きすぎるという病い。

病い=幸せと同義と捉えてもよいのかもしれないが。

とりとめがなくなったけれど、ああすればよかった、こうすればよかったと、後悔と執着が激しい私(今から同じスタジアムライブがあれば、完璧にこなせるのに!なーんて)。

日常においてもそうなりがちなので、このスタジアムライブも悲喜こもごも、「まるで人生のように」感じた。
人生と同じで、時間を戻してやり直すことはできない。
でもどんな体験も自分のなかに確かに残って、次へとつながる。

ひとりきりでの参加で、若くない私にはなかなか過酷な1日であったことは確かで、先週は気持ちも戻らず、洗濯ものも追いつかず、仕事は忙しく通常モードで疲れているけれど、どこか体と心の奥の芯みたいなのがすっきりしていて元気、みたいな不思議な感覚だった。
これって風さんの願いどおり、浄化されたということ?(悪いものは出していって、みたいなことMCで言っていなかったっけ?)
あるいは日頃運動不足だけど、それが一時的に解消された?
そして、振り返ると、あんな気力と体力がどこに潜んでいたのかと自分自身に驚いている(笑)。
またすぐに戻ると思うけれど、やはり「風の魔法」にかけられたのかも。
というわけで、次の魔法にかかるべく、また来年のアリーナも申し込みます。
ああ、あのe +の申し込み抽選地獄(いや、天国)がまたやって来る。


ライブ終了後も退場時間〜駅〜モノレールに乗車まで、とてつもない時間がかかり、やはり3万人(ずっず氏のダイアリーでは1日3万5千人だったと!)がひとつとのところに集まるのって大変なことなのだと感じた。
スタッフの苦労も偲ばれる。

今日、ずっず氏のダイアリーで、なぜパナスタを選んだのかの理由もわかり、うるうるしている。
陸上トラックがなく、よりステージを近く感じられるために、風さんが「遠くにいっちゃったよね」と思わせないために、あそこが必要だったのだと。
また、本当は8〜9月にアジアやNYのツアーも予定していたけれど、コロナで見送らざるを得なかったと(そんな日は近いうちに来るだろうと思っていたけれど、予想以上に早かった)......いろんなことがありつつのスタジアムライブだったのですね。
そんななか、こんな素敵な「風祭り」を開催してくれて感謝です。

大変だったし、席も遠かったけれど、これだけ大収容スタジアムでも落選した人もいるのだから、やはりgraceとして受け止め、大事な想い出にしたいと思う。

そして、ぜひぜひディスク化を希望!(撮影が入っていたので、絶対なると思い込んでいるけど。盛りだくさんすぎて、見逃したシーンがありすぎるのです)

*この旅の想い出。
グッズ、やはり買ってよかったな。バスタオルはお風呂上がりに身体を拭くのはもったいないと、膝掛けにしたり、でも膝掛けもちょっと違うかなとソファの背にかけたらいい感じに。
野菜T、バックのお野菜はプリントかと思っていたら、刺繍だったので一層気に入りました。

*その後、おにぎりひとつちょっとのお昼ご飯しか食べられなかった私が、晩ご飯も逃し気味に......などなど、大阪でのライブ前後の話はまた後日。

藤井風 RSR2022の奇跡の一夜と夢で聴こえた「まつり」

8月13日深夜(14日0時45分からのスタート)、RISING SUN ROCK FESTIVAL in EZOに、藤井風がコロナで出演できなくなったアーティストの代打で急遽出演が決まり、さらにYouTubeで生配信という夢のような時間が訪れた。
その配信を見た翌日の夢の話。
夢の話というのは他人にとってはつまらないものだが、自分にとって面白かったので、自分のための備忘録として書いておく。
夏休み中の朝、起きるにはまだちょっと早い
......外の蝉の鳴き声がうるさいので、apple musicのプレイリストに入れてある藤井風をシャッフルして聴きながらの、嬉しい二度寝をすることに。
その二度寝の夢の中で、「まつり」がかかっていた。
私はどこか広場のような所にいて、これから仕事なのだが、「まつり」が流れてきたので(風さんがその場で歌っているわけではなかったが)、立ち去り難く、しばらくそこに立って聴いていた。
向こうから人が「まつり」に合わせて軽く踊りながら歩いてくる。
よく知らない曲だけど、踊っちゃうよね、みたいなことを言っていたのか、いなかったのか。
夢の中でも、すごくクリアに聴こえるなあと思っている。
最後の「はっ!」という締めの掛け声まではっきり、くっきりと。
その後、夢が続いたのかどうか覚えていないが、目が覚めると、シャッフルしたままの藤井風が流れている。
ああ、そうだ、夢の中で「まつり」を聴いたなと思って、プレイリストを辿ってみると、2、3曲前が確かに「まつり」であった。
つまり、夢の中ではあったが、音楽だけはその時流れていた「まつり」をはっきりと聴いていた、ということになる。
夢うつつの中で、現実音と眠りかけの夢が混じるようなことはたまにあるが、シュチュエーションは完全に夢で、音楽だけ現実のものをはっきり聴いていたのは初めてで、なんとも不思議な、そして目がさめた時はちょっと幸せな気持ちだった。
夢の中にも侵入してくる、風さんの声のパワー。

やはり、RSR2020のライブの余韻かもしれない。
出演できなかったアーティストのカバーのほか、自分の曲も数曲歌ってくれて、最後は「まつり」だったから。

生まれゆくもの死にゆくもの
全てが同時の出来事


という「まつり」の歌詞はちょうど死者が帰ってくるお盆の時期にはぴったりだったし、コロナが再拡大している今、厄払いの歌のようでもあった。
この奇跡の一夜に関しては、ずっずさんこと、マネージャーの河津さんがアプリの日記に詳しく書いている。
14日の深夜の出演のための打診があったのが、11日のお昼という、とんでもないスケジュールで、そこからの一連の動きがどれもこれも奇跡としか言いようがない。
自宅の涼しい部屋で当たり前のように配信を楽しんだひとりだが、それを実現させるためにどれほど皆が駆けずり回り、また幸運な偶然もあったか、あらためて感動する。
それにしても、わずかの日数で(正味1日もない?!)、ほかの人たちの曲をピアノ弾き語りカバーをしちゃうとか、どうなっているの、風さんの脳内は?と思ってしまった。
少し前に、風さん自身もコロナになり、ホールツアーが延期なったので、出演中止のそのやるせない気持ちがわかったのではないかと思うけれど(風さんも比較的早く回復し復帰したようで、ほっとした〜)。
そして出演中、風さんのマイクにバッタがとまった!!のも、何か引き寄せるなあというか、面白かった。すべてが奇跡のよう。
出演中止になったアーティスト目当てのお客さんも満足できたんじゃないかなあ。


そしてこの起動力の鍵はやはりずっずさんなのだろうなあ。
そのずっずさんを動かしているのは、なにより風さん。
昨年のアリーナツアーのドキュメンタリーで、ずっずさんは風さんとの出会いによって人生が変わったと言っていた。
もし風さんが「来年、音楽をやめたくなったとしてもそれはそれでいいと思っている」というようなことも話していて、ちょっとびっくりした。
ああ、この人はここまで風さんのことを思っているのかと。
売れている、あるいは売れそうなミュージシャンがいたら、周囲の人たちはよってたかって、もっともっと売れるようにし、絶対にやめさせないようにと縛る。
そんな光景を直接的ではないが(私は音楽業界にいるわけではないので)、よく触れてきたように思う。
特に海外ではそのプレッシャーで、アルコールやクスリの依存症になり危うくなったり、実際にいのちを落とした人も随分いる。
日本だとよく聞くのが、一番身近にいたスタッフに騙され、お金を持ち逃げされたとかの話。
そういうことから風さんを守り、そして彼の音楽がもたらしてくれる喜びを皆に分けないといけない、そんな使命感がずっずさんにはあるのだと思う。
会社をつくって、風さんを社員(係長!)にしたのも、もし音楽をやめた時に居場所があるように(何もないとローンとか組めなくなっちゃうでしょう、みたいなことも)との配慮かららしく、私は心の中で号泣。
縛らない、自由でいてもらうことも含め、すべてが信頼と愛のうえに成り立っているのだなあ。
そんな数々の奇跡の舞台裏まで、時折日記などでたくさん見せてくれて、本当に嬉しい。

が、この魅力に魅せられた人々が激増。激増、なんて言葉じゃ追いつかないほどに。
チケットが全然取れません(泣)。
ホールツアーは、東京や奈良など、トレードを含め10回くらい応募するもすべて外れ。
大阪のパナソニックスタジアムはさすがに当たるのでは?と、限定アルバムのシリアルナンバーでの先行、一般発売、大阪のイベント会社の有料登録でと、3回応募するも「チケットをご用意することができませんでした」。
まあ、昨年の横浜アリーナ初日は行けたので(友人の申し込みで当選、私はすべて外れなので、やはりクジ運がとことんないっ。ミッチャム缶ですら外れた)、一度も経験したことのない人もいるから、贅沢言ってはいけなんだけど。
いけないんだけど、執着しちゃいます。
夢の中だけでなく、現実でも
「まつり」をはじめ、たくさんの魅力的な曲を風さんや同じファンの皆さんと共有したいのです。

とりあえず、風さん、この世界にいてくれてありがとう、と思いつつ、CDやライブ映像のディスクを楽しみます。
ライブに行ける方、どうか存分に楽しんでください。
その後きっと、ずっとずっと心の糧となるはずですから(昨年の横アリを経験した私が保証いたします)。

🌟これを着て、ホールツアーに行く気満々だったロンリーラプソT。なかなか着る機会がありませんねえ......。





 

 

昨年の6月、新作能「沖宮」を観ました

すでに1年以上前のことになってしまった、京都行きのことを書きます。
2021年6月12日(土)、京都の金剛能楽堂にて「沖宮」(おきのみや)という新作能を観た。
故・石牟礼道子さんの新作能で、衣裳は志村ふくみさん。

当日の金剛能楽堂(上演前は撮影OK)。
前から2列目でよかったが、ちょうどこの手前の柱が目の前に(あったのがちょっとだけ残念)。


昨年の2月頃だったか、ネットでこのお能クラウドファンディングがあり、速攻で申し込んだ。
すぐに成立したのだが、申し込んでから京都でしか公演がないことに気づいて、焦った。
でも、よし土曜日だし、京都旅行を兼ねて絶対行く!と心に決めた。
だいぶ前に上演された石牟礼道子さんの新作能「不知火」を本当に観たかったので、今回のチャンスは逃せなかった。
その頃、まだ緊急事態宣言中で、でも6月頃には気温も上がって、コロナも減って緩くなるのではと予想していたのだが......6月になっても感染は収まらず、職場でも出張を含め、遠方の旅行などは禁じられていた。
でも、これは行くべきでしょう!と、一点の曇りもなく決意していて、でもどこかに後ろめたさを抱えながらも、ひとりで旅立ったのであった(もちろん職場の人には内緒)。


「沖宮」のあらすじ
島原の乱の後の天草下島の村。

干ばつに苦しむ村のために、雨の神である竜神への人身御供として、亡き天草四郎の乳兄妹の幼い少女あやが選ばれる。

緋の衣をまとったあやは緋の舟に乗せられ、沖に流されていく。舟が沖の彼方に消えようとした瞬間、稲光とともに雷鳴がとどろき、あやは海に投げ出される。

あやは天青の衣をまとった四郎に手を引かれ、いのちの母なる神がいるという沖宮が沈んでいく。そして、無垢なる少女あやの犠牲によって、村に恵みの雨が降ってくる。

ーー公演プログラムより

 

この物語は、コロナ禍で苦しむ今の状況にも通じるのではと、企画されたそうだ。

というわけで、仕事を調整し万難を排し、昨年の6月、公演日の1日前に京都へ向かった(もちろん京都観光もするため!)。
いつも混んでいる新幹線、1車両に数人しか乗っていない風景もなかなかに新鮮だった。
駅から近くて便利なので何度か利用したことのある新都ホテルは、外国人観光客が爆増してからは最近なかなか予約が取れなかったが、今回はスムースに。
そして、着物を着て鑑賞するという壮大な目標も立てた!
着物は嵩張るので、荷物が大変だった。
今思い返せば、一式宅配便でホテルに送っておけばよかったなあと思う。
で、6月の梅雨の時期でそこそこ暑そうだし、皺になりにくいポリ着物にしておいた。
人間国宝・志村ふくみさん衣裳の能舞台の鑑賞にポリ着物?! という気はもちろんしたが、それそはそれで、というか、しょせん釣り合う着物などないので(冬の袷なら正絹の小紋など、ちょっとはいいのがあるのだが......)。でも帯は、夏ものの博多帯で。
ホテルの部屋の全身の鏡のある場所がドアの前だけで、クーラーが届きにくく、暑くてひとり格闘(笑)。
いつでもさらりと着られるようになりたいものですが、まだまだ修行が足りません。


ようやく着付けをし、京都駅で冷たい抹茶フロートで一息ついてから、金剛能楽堂へ。京都御所同志社大学近くの、とてもよい所にある。

「沖能」の上演前には、竹で作られたパイプオルガン(16世紀末に天草で作られたものの復元!)と、クラシックとの歌手との演奏もあった。

さて「沖宮」について。
能は、歌舞伎のようなエンターテインメントと違って、観慣れていないと難しいが、このお話はわかりやすく、事前にあらすじも読んでいたので、入りやすかった。
そして、志村ふくみさんの衣裳と、それを身に纏った能楽師たちの厳かで神々しいこと!
能の衣裳は幅というか生地の嵩があるせいか(稚拙な表現ですみません)、迫力に満ちている。
布そのものの力を感じた。
能楽堂の清浄な空気感と静謐感と、衣装の美しさと、悲しみを超越した物語の美しさと。
その空間に、石牟礼道子さんの魂が降りて来ているような気がした。

能の感想を言葉にするのが難しいので、自分の思い出のなかだけにしまっておこうかと思っていたのだが、それももったいなような気がして......しかし、舞台を観た時のあの心の震えは、結局言葉にできず、このブログも単なる備忘録に。

HPがまだあるので、演じられた能楽師の方の詳細や舞台の映像(一部)や写真が見られます。

okinomiya.jp


観客の中にも、もちろん素敵な着物姿の方を何人もお見かけし、私はなんとなく気恥ずかしくなり、そそくさと帰ったが、コロナ禍のなか、魂が浄化されるような一夜だった。
1年以上も経ってしまったけれど、困難な状況のなか、素晴らしいものを観せていだき、ありがとうございました。


★この舞台の前後に、せっかくだからと決行した「京都ひっそりひとり旅」のことは、また後日、書きます。
人の少ない(←ここを強調)嵐山や清水寺……粋な感じの古着物屋さん、鍵善の葛切りなどなど、味わい深かったです!

風さん&ずっずさんからの、汲めども汲めども尽きぬ愛

書きたいことはたくさんあるのに、2ndアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」の発売以降、風さんのめまぐるしい活躍に付いていくのに精一杯で、書く体力、時間などなどがなく......気がつけば、もう6月半ば。
せめて、来週6月14日の風さん25歳の誕生日前に一度くらいは更新しておこうかと思い立った次第。

アルバム横のキャンドルフォルダーはフィンランドイッタラ社製、アアルトのデザイン。お気に入りです。
ハチミツ色がLASAのアルバムジャケットの明るい色に合うなあと思い、アルバムが届いた日、お祝いに火を灯した。
このLASAのなかでは、「まつり」と「やば。」が特にお気に入り。

芸術選奨の新人賞受賞、LASAも好評で売り上げ上位、民放テレビでお笑いに初挑戦、今はホールツアー真っ最中(二次抽選、トレード抽選と可能な限り申し込んでいるが見事に外れまくり!)。
それらの一つひとつについてコメントしたいけれど、キリがないので、今回は思うことを簡潔にざっくりと。

※映画「東京2020 オリンピック」で、風さんが担当した音楽について......コロナ禍のなか強行された東京オリンピックに関しては、いろいろ思うことあるし、映画も観ていないので、今回は言及しないでおく。ただし、予告でちらりと聴いた風さんの音楽は素晴らしかった。単純なオリンピック礼賛のアンセムではないことは確かで、その辺のセンスはさすがだなと感じた(映画の感想もネットでちらちら見る限りでは、なかなか一筋縄でいかない感じのようで)。

さて、昨年の2月頃からファンになり、早1年と数か月。
この間、ほとんど毎日、藤井風を聴き続けていて、はじめはそのうちほかのアーティストの音楽もまた聴くようになるだろうと思っていたのに、一向にそうならず、飽きるということがないので、いったい何が起きているのだろうと思ってる。
さすがに世界が狭まっているのでは......ほかの音楽も聴きたいのだけれど、聴く気にならないという、妙な感じ。
夜、眠る前にも「おやすみ音楽」として流しているのだが、実は毎晩1曲終わらないうちに眠りに落ちているので(というのも、朝起きると聴いていた記憶がないので)、風さんの歌声には強力なα波か何か出ているに違いないと思っている!
もちろん、覚醒時に聴いてもさらになおよし、なのだが。

さて、HEHNに続いてLASAも歌詞が秀逸です。
風さん、あまり本は読まないというのに、どこからこの豊かな語彙(ナイス語彙!)が溢れ出てくるのか?
先にメロディーができて、そこに歌詞を乗せるのだと本人が言っていたので、音が言葉を引き寄せるのだろうか。

特に「まつり」は音、歌詞ともに素晴らしい。


生まれゆくもの死にゆくもの

全てが同時の出来事


ふつう、人生を折り返したあたりで、やっとこういう境地に至れたりするわけだが。
風さん、実年齢24歳だが、精神年齢は100歳くらいじゃないかと思う(笑)。
「まつり」はすべての人間の存在を全肯定するかのような詞だ。
そういえば、アルバム発売時に出演したラジオ番組のなかで、何の曲についてだったかうろ覚えだが(たぶん「青春病」か「旅路」だったと思うが)、地元の中学生の子たちの姿を見ていて、とてもエモーショナルなものを感じ、そんな思いが込められている、みたいなことを語っていた。
うまく言えないが、そうか、自分のことだけでなく、ちょっと遠くから見た視線、俯瞰の視線が鍵なのかもなあと思った。
そして、「まつり」のなかの


何も知ったこっちゃない

好きにしてください


という、決して攻撃的にならない、ソフトな命令形みたいな歌詞がたまりません!
また、「やば。」の


何度も何度も墓まで行って


のところは、えっ「墓」って歌ってる?と、私の聴き違いかと思った。
「死ぬのがいいわ」と並んで、今までのJ-POPにはなかった、とてつもなく変な歌詞である(褒めてます)。

ほかに歌詞について言えば、「へでもねーよ」。
今までapple musicでしか聴いてなくて歌詞を読んだことがなかったのだが、今回歌詞カードを読んで、今まで全然違う詞で聴いていたことが判明。
歌い出しの

野菜ばっかの生活しょんのに


が「裁判官の生活しょんのに」に聴こえていた。それに続く


あんたの軽いパンチ へでもねーよ


の辺りも、「あんたが変わる番 へでもねーよ」と聴いていた。
つまり、人を裁く傲慢な態度の生活をしていて(それが誰かは不明)、それを変えなよ、みたいな意味かと私の脳内では変換されていたわけだ。
本当の歌詞がわかってすっきりしたけれど、私の脳内変換歌詞もそう悪くはなかった気がする。
あと、韻を踏んでいるのもよいなあ。
「きらり」と「さらり」、「damn」と「だんだん」など。
ラップなどのほかに、子どもの絵本にも、この韻を踏むリズミカルな繰り返しの言葉はよく登場するので、いつか絵本の文章なんかもいけるのでは?! 
絵は誰の絵がいいのかなあ、なんて密かに妄想している。
まあ、今は音楽に専念する時期なのでしょうけれど。
いつか、NHKみんなのうた」で子ども向けの歌を作ってほしいなあ。 
風さんの歌は絶対子どもたちに受けると思うよ。

で、いよいよ来週は、アリーナツアーのBlu-Ray発売!
さっき、amazonから「ご注文の商品が発送されました」の通知が来て、え、頼んでいるものないはずなのに、間違って何かポチった?と思ったら、そう、このBlu-Rayだった。
だいぶ前に予約注文していたため忘れていたのだ。
自分で注文していながら、サプライズ・プレゼントみたいで嬉しい!
私が行けないホールツアーも、ずっずさんがアプリ上で小まめに日記で様子を報告してくれたり、風さんもSNSで美味しそうなヴィーガンランチや、ご当地のゆるキャラたちとの楽しい写真をあげてくれている。
折々、開催してくれるYouTubeの無料生配信もそうだけれど、こんなに贈り物をしてくれるアーティスト、かつていただろうか。

風さん&マネージャーのずっずさんからの、汲めども汲めども尽きぬ愛。
これらを当たり前と思ってはいけないなあ。
この愛を受け取りつつ、風さんがいつまでもいつまでも心地よく自由に音楽を創っていけるようにと、願うばかりだ。

 

 

人生でもっともすべきことは花見かもしれない   神代植物公園の桜たち

昨日、思い切って神代植物公園に桜を見に行った。
住まいと同じ三鷹市にあって、近いと思いつつもなかなか行けないでいた。
毎年、あそこの桜はすごいのだよなと思いつつ、平日は仕事だし、土日は何やかやと用事があるうちに桜は散り、去年、一昨年はコロナで何となくためらっていて......。
しかし、2年後には東京を離れるので、そうすると、今年と来年しかもう行く機会がないことに気づいたのだった。


三鷹市は広くて、直線距離だと近いはずなのだが、自宅からバスの路線をどうつないでいくか、なかなか難しい(植物園のHPには、鉄道の最寄り駅からの路線案内しかない)。
あれこれ調べて、バスを乗り継いで小1時間かけ......。
足を一歩踏み入れた瞬間、あまりの美しさにちょっと泣きそうになった。
散りかけかなと思っていたのだが、都下で多少気温が低いせいか、あるいは排気ガスなどにさらされず、ここで元気にいられるせいか、まだまだ花をつけていてくれた!

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神代植物公園の桜を見たのは、実はもう20年以上前のこと。
咲きこぼれるように咲いていて圧倒されたのだが、先のような理由で、三鷹市に越してきて10年以上も経つのに、桜を見に来たことは一度もなかった。

そもそも、私はあまり花見に行かない。
以前、井の頭公園にちらっと行った時、桜よりゴミの山の方が目に入り、こりゃダメだと思ったので、あの辺りや上野公園などには近づかないことにしている。
杉並区なら善福寺公園、都下ならこの神代植物公園がいいと思っている。
駅から遠く、土地鑑のある人しか来ないので、混み混みにならない。
都心でおすすめは新宿御苑。ここもかなりの人出はあるが、閉園時間が早いので、酒盛りなどする人も少なく、何より桜の種類が多く、「御苑」とあるだけに素晴らしく手入れされている(新宿御苑も来年こそは行きたい......)。

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神代植物公園の桜は染井吉野だけでなく、オリジナルの神代桜やら枝垂れ桜やら、とにかく多種多様。
巨大な老木から桜がぶわっと溢れかえるように咲いている様は、可憐というより雄々しいというか、凄みがある。
上の写真は、そうとうな巨木なのだが、iPhoneのカメラではスケール感が出ないなあ。
                   

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枝垂れ桜の根元には、ヒヤシンスが。


ひとりで手ぶらで行ったのだけれど、大人数でシートを敷いたりしての「宴会」でなければ、飲食もOKとのことで、来年はひとりでも誰かと一緒でもちょっと美味しいものを用意して、ボトルにコーヒーでも詰めて来ようと思った。

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桜色のソフトクリーム。でも桜味ではなく、バラソフト(ここはバラ園も見事)。

仕事だとか、疲れたとか、こうして、美しいものを見過ごして人生は過ぎて終わっていくのではないか......それは悲しいではないか。
人生でもっともすべきことは花見である!なんて、この日は思ったほどだ。
杖をついたおばあさんがひとりで来ていて、写真を撮るのを頼まれたが、こういう人も残りの人生であと何回見られるかわからないという思いがどこかにあるのではないか。
杖こそついていないが、もう若くはない私もそういう思いはある。
水村美苗さんの名作『母の遺産』のラストには、桜と人生の儚さを重ね合わせる描写があり、ことあるごとにその文章を思い出すせいもあるかもしれない。

桜が咲いたからと言って浮き足立ったり、やたら宴会騒ぎになるのが嫌いなのだが、こんなふうにしみじみ思う自分が、誰より浮き足立っているのかもしれない。

 

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何にせよ、咲いている時の爛漫な感じと、散っていく儚さが、何かと人にいろいろなことを思わせるのが、日本の桜。

🥀おまけ。神代植物公園は歴史ある植物園でとにかく植物の種類が豊富。
桜だけでなく、こんな可愛らしい花も咲いていた。

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アカバミツマタジンチョウゲ科)。このまんま、着物か帯の柄にしたくなる。

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桃の花も可愛い。赤に近い桃色、桃色、薄い桃色と、1本の木に3色もの花が咲いていた。

と、桜を愛でつつ頭の中では、藤井風さんの2ndアルバム「LOVE ALL SERVE ALL」からの新曲、「ガーデン」をはじめ、「まつり」や「やば。」(タイトルとは裏腹にしっとりした美しい曲)が頭の中で鳴っていた(笑)。
特に、「ガーデン」の詞の一節、「わたしのガーデン 果てるまで」なんて、本当にそのとおりだわと。
5月頃、バラが咲く季節にも行かなくてはと思いつつ、神代植物公園を後にした。

www.tokyo-park.or.jp