九月ウサギの手帖

うさぎ年、9月生まれのyukiminaによる日々のあれこれ

田嶋陽子さんのことを何も知らなかった

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先週から飾っていたバラに、ミモザとマーガレット一輪ずつを追加。

マーガレットはミモザを買った花屋さんからのおまけ。

 

 先月17日、TBSラジオ荻上チキ・Session-22」に田嶋陽子さんが登場されていた。

 その時のお話にとても感銘を受け、ラジコで聴き直しメモをとっていたので、今日は国際女性デーということもあり、ブログに書くことにした
 再評価されている田嶋陽子さんだが、私は1990年代に人気のあった番組「ビートたけしのTVタックル」で知り、彼女のことは結構見ていた(そういう人は多かったと思う)。

 しかし、田嶋陽子さんについては、実はかなり誤解していたことに最近気づき始めた。当時、どういう人かわからないなりにも、彼女の発言は頼もしく、面白く見ていたが、ああいうメジャーな番組に出るという点で、出たがりなちょっと変わったタレント風学者さん?という受け止め方だった。
 90年代はネットの情報もなく、彼女がどういう人か調べる術もなかったのだ。
 そんな気軽な受け止め方とは裏腹に、田嶋さん自身は必死の思い(+戦略)でのメディア登場であったことが今回のSession-22でよくわかった。

 テレビに出るなんてと批判もされたらしいが、駒尺喜美さん(1925〜2007年/女性学者。田嶋陽子さんと同じ元法政大学教授)に、

「テレビは拡声器。論文を書いたって1,000人か2,000人にしか読まれない。でもテレビは視聴率20%だったら2,000万人が見ている。10言って、1でも(主張が)出ればいい」
 と言われ、テレビに出演し続けたそうだ。

 以下、音声をすべて書き起こしたわけではなく、言葉もそのとおりではないし、要所要所の断片的なメモになるが、貴重なメッセージだと思うので、記しておく。

 

 フェミニズム」とは、どういうことなのか?

       ↓

 田嶋陽子が女である前にひとりの人間として解放されること。
 解放されるついでに、私の自由と人権を邪魔するものを駆逐していく、変えていくこと。
 自分は、当時のフェミストのなかでも異端だった。

 それまでのフェミニズムというと、「マルキシズムフェミニズム」「エコロジカル・フェミニズム」を主張する人たちがいて、それは「女の人は企業に入って働くと、資本主義の味方をして東南アジアの女性を搾取することになる」という主張だった。

 

 「マルキシズムフェミニズム」「エコロジカル・フェミニズム」というのは、私はここで初めて知った。今聞くと、そんなゴリゴリとした主張、現実とはちょっと遊離した理想論に思えるけれど、いろいろな過程を経て、今があるんだろうなとも思う。

 しかし、田嶋さんはそういうなかでも「異端」で、

 

自分で働いてお金を稼ぐことは資本主義とかと関係なく、ひとりの人間が生きていくための自由。

 

という考えを貫く。

 

・養われているとーー遠慮しながらモノをいわなくてはいけない。
養われるのではなく、ひとりで食べていくということがどうしようもない原点。

・高度経済成長期、企業は女が入ると効率が悪いから、男が200%が働き、女は自立させてもらえない(誰かの面倒をみるという役割)。

G20の議長からも日本では女の人のリソースを使えていないと指摘されている。

・女性問題は男性問題でもある。女性も働いて納税すれば国力が上がる。
というと、すぐ言葉じりを捉えて、女性は生産性の道具か?とかいう人がいるが、
働けることは女の人の人権、自由。誰でも働ける状況を整えるのは、国の役割。

 

 また、リスナーからのお便り「専業主婦になりたいという若い女の子たちにどう伝えていくべきか?」には、

 

(専業主婦を)やってみればいいじゃない。でも、違った時に人生を変える力を持たないと、人生を選べない。人生、沈没してしまう。

 

と実に明快な言葉が。

 

男らしさ、女らしさをなくさないと差別がなくならない。
自立してリーダーシップを発揮するというのは、誰でもが持っている力。

 

男らしさに失敗した人は、暴力やDV、殺人などに陥ることもある。

 

特にここが重要だと思う!
  ↓
フェミニズムとは、その人がその人を生きること。自分を手に入れた人はできる。

 

各分野では活躍する女性は増えているが(特に文学の世界など)、意思決定をするところに女の人が増えないとダメ。数が大事!(北欧はそれをやった)   

 

 フェミニズムというと、女性の権利「だけ」を振りかざすうるさい人たち、みたいな印象を持つ人も少なくないようだけれど、本当は、女性だけでなく、男性をも抑圧する古い家父長制からの解放であり、誰もが自分らしく生きるために、ということなのだろう。

 「出たがりで、よく怒っているちょっと変わった女性の学者さん」という印象でTVタックルを見ていた頃から、長い時が流れ……田嶋陽子さんが覚悟をもってメディアに出ていたことは知る由もなかったし、本来は英文学を、ヴァージニア・ウルフなども研究していたことも知らなかった。現在80代、彼女が若かった頃、女性が自立して自由に生きていくことは、どれほど困難を伴ったことだろう。
 でも、番組のなかで、男性陣にからかわれたり、馬鹿にされたりしながらも、彼女が伝え続けたメッセージはそれなりに自分のどこかに、いや、私だけでなく多くの人のなかに根を下ろしていたと思う。

 私はほかにもいろいろと本は読んでいたが、やはりメジャーなテレビ番組での発信力は大きかったのだ(その分、誤解もあったが)。
 
 私自身、学歴も豊かなバックグラウンドも何もなく、「社会」というものが本当に怖かった。両親ともに早く亡くしたせいで苦労したわりには、世の中のことをあまりわかっていなかった(教えられていなかった)ことも、その怖さには含まれていたと思う。

 それで、会社や組織で活躍できなくても、「各分野」の片隅で何かできればと夢見たが、その各分野に出ていくことこそ、豊かなバックグラウンドや親の後ろ盾や経済力ーーつまり専門的な勉強をできる環境ーーが必要だった。
 そんなわけで若い頃は挫折して、お金もなく、心が折れまくりだったが、幸か不幸か、家に引きこもることは許されなかったので、社会は怖かったが、働かざるをえなかった。
 そんな時、「女の人も自分で働いて自立しないと」という彼女の繰り返しの言葉はどこか、胸の奥底にあり、それなりに力になっていたと思う。

 私の母親も、働いて自立できなかったことが、自分の自由はもとより、ついには早く亡くなったことにもつながっている気がしてならず、田嶋陽子さんの主張(=フェミニズム)は本当に大事なことなのだ。

 

 というわけで、四半世紀以上も経った今、あらためて田嶋陽子さんにありがとうと言いたいのだった。

 

田嶋陽子さんの公式HP

 80代になられても、なんとお元気そうなことか。闘ってきた人の笑顔!